女木島の大祭りと直島、男木島

掛け声とともに独特のリズムで太鼓を叩く4人の子ども。

太鼓乗りと呼ばれる子どもたちは、それぞれ赤い投頭巾(なげずきん)を被り、色とりどりの襷を長く垂らしている。

太鼓乗りが腰かける櫓は、長いかき棒を担ぐ20~30人の男性に支えられる。

f:id:norimatsu4:20070805090509j:plain女木島の大祭り 2007年)

 

この太鼓台(たいこだい)は、2年に一度、真夏に行われる女木島(めぎじま)の大祭りで登場する。

朝、島の集落のはずれの小高い場所にある住吉神社を出た太鼓台は、時間をかけて島内を巡る。

その途中で、横転する、また水平方向に旋回するなど激しく練り、浜から海の中へと入る。

沖からは太鼓乗りが叩き続ける太鼓の音と掛け声が響く。

しばらくすると太鼓台は海から上がり、また島内を回って神社へと向かう。

太鼓台が神社で練って神事が終わるころには、すでに薄暗くなりつつある。

f:id:norimatsu4:20070805160410j:plain(激しく練る太鼓台 2007年)

f:id:norimatsu4:20070805162122j:plain(海に入る太鼓台 2007年)

 

さて、この投頭巾に長い襷といった太鼓台の太鼓乗り(乗り子)の衣装は、小豆島(しょうどしま)の一部や豊島(てしま)など、香川県では島嶼部の祭りで特徴的に見られる要素だ(乗松真也 2008)。 

 

乗り子の衣装に加えて、太鼓のある櫓が屋根をもたないシンプルな太鼓台は、直島(なおしま)のそれとよく似ている(田井静明 2008)。

太鼓台が旋回したり、スピードを上げて走ったりする激しい練りも共通する。

f:id:norimatsu4:20071021140259j:plain(直島、本村の太鼓台 2007年)

 

さらに、女木島の大祭りと直島本村(ほんむら)の秋祭りでは、前日の夜に屋台(やたい)が出る。

両島の屋台は木枠を組んで飾り付けをしただけのもので、中で子ども(大人がいる場合も)が鉦などを用いてはやす。

f:id:norimatsu4:20070804214831j:plain女木島の屋台 2007年)

f:id:norimatsu4:20081018185113j:plain(直島、本村の屋台 2008年)

 

また、女木島と異なる年の夏に行われる男木島(おぎじま)の大祭りには、太鼓台こそないものの、屋台が登場する。

この屋台も、木の骨組みに簡易な屋根をもち、中には囃子方がいるという、女木島や直島とほぼ同じスタイルだ。

f:id:norimatsu4:20080803091146j:plain(男木島の屋台 2008年)

 

つまり、女木島と直島はよく似た太鼓台をもち、簡素な構造の屋台は男木島を加えた3島に共通するのである。

 

直島、女木島、男木島は「直島三か島」(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・竹内理三編 1985)として、江戸時代の大半は幕府領だった(※1)。

女木島、直島両島の太鼓台の類似の背景として、暗に江戸時代における同一管理が指摘されてきたように(田井静明 2008)、3島の祭りには「直島三か島」の名残が表れているのかもしれない。

 

※1 直島と女木・男木島は、明治期以降は別の行政単位として歩んできた。現在、直島は香川県直島町女木島・男木島は香川県高松市である。

 

「角川日本地名大辞典」編纂委員会・竹内理三編 1985『角川日本地名大辞典 37 香川県』

田井静明 2008「香川県の太鼓台・ダンジリの多様性」『香川県の祭り・行事―香川県祭り・行事調査報告書―』

乗松真也 2008「香川県島嶼部にみられる祭り・行事の様相」『香川県の祭り・行事―香川県祭り・行事調査報告書―』

島の神様に捧げるお祭り「女木島 住吉神社大祭」 2011年の大祭りのレポート

Megijima Matsuri - August 4th 2013 2013年の大祭りのレポート(英語)

 


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