小手島の蛸壺漁
人口39人*1の島に5,000個を超える蛸壺。
蛸壺漁が解禁される5月になると小手島(おてしま・香川県丸亀市)の港には多くの蛸壺が並ぶ。
そのほとんどは船具屋から仕入れる樹脂製の蛸壺である。
(所有者がわかるようにカラーリングが施された蛸壺)
それでも島の中には陶器製の蛸壺も積み重ねられている。割れているものも多く、現在は漁に使われていない。
小手島では陶器製の蛸壺を多度津(たどつ・香川県多度津町)から購入していた。多度津で蛸壺が生産されなくなった後*2、宇多津(うたづ・香川県宇多津町)の蛸壺を使っていたこともあったという。
陶器の蛸壺は周囲をセメントで固められている。二見(ふたみ・兵庫県明石市)でもみられる陶器が割れないようにする工夫だろう。
(セメントで固められた陶器の蛸壺。多度津産という)
(蛸壺を結びつけた縄を沈めるためのおもり。近隣の広島で採れる青木石か)
また、数は少ないがアカニシの殻の蛸壺もある。イイダコ漁に用いられる蛸壺で、同様の漁法は幕末のシーボルトの記録にも登場する。
現在の小手島では、アカニシ殻でイイダコを獲るのは1軒のみという。
(アカニシの殻をイイダコ用の蛸壺に)
(アカニシの殻をイイダコ用の蛸壺に。セメントで固められているものもある)
小手島ではタコ漁に加えてイカナゴ漁なども盛んに行われている。漁業の神・エビスを祀るほこら、プールに描かれた漁の絵などからは、島と漁の結びつきの強さが垣間見える。
(港には漁業の神・エビスが祀られる)
(小中学校のプールに描かれた漁。漁船の表現にはリアリティがある)