二見で使われる宇多津産蛸壺
幕末に港湾施設が整備され、それを顕彰する「二見浦築港記念碑」が建っている。
蛸壺漁が盛んな地らしく、港では数多くの蛸壺を見かけることができる。
プラスチック製のもの、塩化ビニル管を加工したもの。
陶器の蛸壺は宇多津(うたづ 香川県宇多津町)の藤原たこつぼ製造所のものだ。赤い釉薬の蛸壺がほとんどで素焼きの蛸壺は少量ある。
二見にほど近い明石市西部の沿岸地域、八木、江井島(えいがしま)、魚住(うおずみ)なども陶器製蛸壺の産地で、1963年(昭和38)ころまでは7軒が操業していたが*1、今ではもう見られない。
1988年の記録によれば、当時、近辺で蛸壺を生産していたのは八木、江井島にそれぞれ1軒ずつしか残っておらず、「当地のタコツボより、四国香川のタコツボのほうが価格が安いので、当地域の一部のタコツボ漁操業者は香川のものを購入している」*2とある。明石の蛸壺はこのころには宇多津産に押され気味だったようだ。
二見では鍋谷産の陶器製蛸壺をそのまま(ゴムくらいは巻いているが)使用するのは少なく、多くは周りをセメントで覆い固めている。
破損の防止と、海底に沈むための重さの確保を兼ねているのだろう。
口の部分が見えなければ陶器製の蛸壺と判断するのは難しい。
蛸壺漁は、長い幹縄(みきなわ)に100個以上の蛸壺を結びつけて海底に沈める漁法である。幹縄の両端には蛸壺の付いた幹縄が浮かないよう錘(おもり)として石などを装着する。
二見では方柱状に固めたセメントの錘を見かけるが、錘の中に宇多津産の陶器製蛸壺が入っているものがある。幹縄の錘とはいえ、海に沈めるのだからマダコが1匹でも多く捕れるよう蛸壺の機能も兼ねてあるとのこと。
セメントでぐるりを覆われ、錘と一体化した陶器製蛸壺は、漁の道具を漁師自身がカスタマイズして使用する好例といえそうだ。